「夜光性昼行灯駅前宇宙」収録曲解説 by文谷昌弘
プロローグ
構想二年、けばだったむしろの上で、ころんころんと寝返りを打ちつつ機が熟すのを待ち詫びていたのです。夜ご とに、独り歩きして仄かに役立たずな愚純なる醒めたる灯を照らす、あ・ん・ど・ん・が一陣の鎌鼬に吹き込まれ、ずたずたにされた、と或駅前県宇宙一丁目零
番地の海抜零センチメートル地帯。其処には、三年間幽閉されし太郎さんや、おいてけ堀のエイリアン衆やら、痩せこけながらも相方が羽織のニアミスを決死に シュミレーションしやら、雷鳥が飛翔し、シャム双生児の背中の境界線上の淫美で崇高なる瘤に纏わる数奇な運命やら、真っ黒くろ助が、わいわい群がる癌細胞
や、永久凍土に閉じ込められたナウマンゾウの、ぱお〜っや、助太刀してあげる事自体が、そのモノ自体を腐乱させてしまいますとの逆説に満ちた偶話やら、ま な板の上にて捌かれるのを待ちがれている鯉(OR恋)の冒険譚やらが交錯し絡み合ふ全十編の等身大の宇宙!!今正に御開帳して総てが白日のもとに晒され明
らかになる!
1.三年寝太郎奇譚
今は昔、もふ三年も出社していない、ましてやスウィートホームにすら帰還してない有り様。いつもの場所にて、
不意に自分の居場所が、点で判らなくなったんです。公園の土管に頭から這いつくばって侵入してみたら、隠れ里に到達しちゃったのら。隠れ里では人々(勿論 墜ちた人々)は生業として、草鞋の裏側に純度の異常に低い砂金を集積しては棲みかとして宛てがわされし高級水車小屋に仮借屋している。或土砂降りの小春日
和の夕べ、寝太郎は路傍に可憐に太陽に向かって小輪に咲いているタンポポを見つけ淡い慕情を抱くのだった。路傍の牛の反芻と水溜まりの、しいもんきいとが 無数に繁殖する隠れ里、その地で寝太郎が決死の思いで起こした百鬼夜行魑魅魍魎愚行のライオットとは…。積極的に光合成を取り込み野草と化した寝太郎の心
中はいかに…。三年間は兎に角寝太郎、三年間は幽閉し太郎、四年目からはバリバリ活発し太郎、四年目からは呪縛を解い太郎。明日眼が覚めたら、貴方も、 ひょっとして私も寝太郎に転生しているかも知れません。朝方、布団から抜けだして、まず足元を確認してみて下さいね。徒労の草鞋を履いているかも知れませ
んので…
2. エクトプラズムの下宿
俺の躰の中を潜伏中のミクロの決死隊が目撃したモノとは…。それは荒涼たる大地と塩水湖と観る角度によって二
本にも三本にも見える、一本のお化け煙突だった。複合汚染されちまった我が体内ドラッグ工場へ、ようこそ! 天から飛来して来る新種の黴の胞子の群れ、群れ、群れ。影の影が暗躍する。そやつは、すでに俺の中の俺に、なりすまして生活しているんだ。吐き気を催しド
ドンコの姿をしたエクトプラズムが喉を逆流して半開きの口から顔覗かせる。室温が急降下して霜が降りる。人間解散させますか?人間廃業させますか?いえい えいえいえ解散しません。いえいえいえいえ廃業いたしません。アソコの先ッポにセントエルモの炎が着火して俺の悩める煩悩を綺麗さっぱり焼き払ってくれま
した。嗚呼、糞リアリズムの宿 嗚呼、エクトプラズムの宿借り 嗚呼、エクトプラズムの間借物 おいてけ、おいてけ、てけてけぼりぼり…
3. 星と俺とで決めたんだ〜エイリアン・営利やん・鋭利いやん〜
しかしながらに、異星人が多過ぎる。右を見ても左を見ても天を仰いでも 下をうつ向いても、そんぢょそこいら中、エイリアンだらけ、け、け。ひょっとして貴方もエイリアン?ひょっとしたら俺もエイリアンかも…。笹の葉に守られ
た異星人の秘密基地内部の分娩室では秒単位で、ひっきりなしに陣痛の雄叫びを、張り上げる♀エイリアン達。産めよ増やせよのどんちゃん騒ぎ。星への帰還、 犯人と俺とで決定いたしました。犯人と俺との、御約束なのだから…。異星人群衆のアイソレーションなしくずしの孤独、この球体の地獄から発信するのです。
誰か、誰か、応答願います!応答願います!至急応答願います!ツートト、ツートト、トツート、ツートトト…
4. 双子演歌デュオ
そそりたつ絶壁に、肝っ玉母ちゃん&お父っつあん&婆ぁ様&ノスタル爺 が集結した、と時を同じくして、とある海水浴場の海開きオープニングセレモニーに現在巷で噂の双子演歌姉妹がビーチ特設ステージに今正に登場せんとしてい
るのです。海の家の猛者達で結成された双子演歌デュオ私設自警団が円形の特設ステージの前列を金属バット担いで護衛体制を敷いている。異様なトランス状態 が興奮を呼びただならぬ熱気と熱狂とでビーチは飽和地帯と化している。何処ともなく、朗らかで明朗なシュプレヒコールが木霊している。裸の王様同様に双子
演歌デュオは純粋なる心の持ち主しか見えないのか?双子演歌デュオは瞳で聴いて耳で拝めよ。第六感にて体感せよ。あの娘達を観てて、今まで産むのを躊躇し てきた、ややこを産むのを空想して想像妊娠している自分が急におかしくなっちゃって、ぷっと吹き出しちゃったの。だが、しかし事態は商店街の狭い軒先を2
台のボンネットバスが、すれ違い越しの圧倒的な威圧感で発生したビッグバーンに誘発された双子演歌ソウルの核融合が超新星を誕生させ…そして…シャム双生 児の背中の境界線上の瘤を巡り安息の大団円へと雪崩れ込むのであった。
5. 二人羽織
アナログ盤で言ふところのA面ラストの魅惑のファンクンパンキッシュ (ダブ効果あり)なナンバーが、この“二人羽織”なのだ。早朝、白昼、夕暮れ時、丑三時、要するに二十四時間二人羽織しに、やって来る相方と嫌、嫌しなが
らも、結局その相方と二人羽織という愛情の表現としての合体作業を繰り返し繰り返しニアミスしながらシュミレーション訓練してしまう市井の小市民の唄なの です。相方が鬼の様な形相で、獣の独特な臭いを発散させながら、三白眼の白目を剥き剥き泡を吹きつつ、異様に痩せこけながらも俺の羽織の相乗りを、せがみ
に毎日尋ね来るんです。養成ギブス仕掛けのニ.ニ.ン.バ.オ.リ.…。一人羽織、二人羽織、三人羽織、四人羽織、五人羽織、六人羽織、七人羽織、八人羽 織、九人羽織、十人羽織、…そして…そして…そして…11人いる!!
親愛なる、サンチョ.パンサよ、我の後に続けよ、はいどうどう、怪獣にみたてた水車小屋(中には三年寝太郎が!)に勇んで挑みかかって行ってしまった。未 だに帰還せず。
6. 雷鳥
アナログ盤で言ふところの、ええい!くるりんぱっと塩ビ円盤を、 ひっくり返した冒頭ですな。 岡山県北に、岡山の小京都と詠われし津山といふ街があります。花見の名所、鶴山公園の麓に、ひっそりと佇む何やら怪しげな旧校舎利用博物館。カルトな知る
人ぞ知る博物館、津山自然博物館(借金してでも一度は行くべし)。俺は、かの博物館にて初めて本物の雷鳥(生剥製だが)を観た。毛並は黒色(白いのかと想 像していた)、結構でかかった。多分飛べないのだろうと思わせる体型。初対面から約5年の月日が流れ、よほやく駅前セカンドに収録されし、この曲。思えば
前作「人情味は—」に収録予定だったのだがトータルタイム割れにて収録断念、今回晴れて新録して輪廻転生蘇って幻の羽はばたかせ飛翔いたした次第なり。 雷鳥が黒き五線譜上で暗躍して不協和音を奏でる。ガラスを爪で引っかくような和音が木霊する。プラスティック製食品サンプルの宙に浮いた御箸が空を摘んで
青空背景に只一組、その御箸の上に雷鳥は棲息している。帰巣本能が狂った渡り鳥が北半球と南半球とを行ったり来たり戻ってこない。我々が、つい赤提灯に群がってしまふのは遥かなる太古の虫の記憶なのでしょうか。
7. 素敵な癌
真っ黒くろ助が、わいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわ
いわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわいわ
いわいわいわいわいわいわいわいわいと、うぢゃうぢゃうごめいています。わたくしたちマクロの決死隊 は、とある小生の、すやすや眠ってる最中の、ぽっかりあんぐりと寝息で開いている御口の中からマクロ潜水艦にて体内に潜入せり。其処で我々が遭遇した驚愕
の人体内部の神秘の数々。時を同じくして地上では、御盆と御正月とが同時に出現していた。その上空には、電力を好物とする、雲に無数の触手がうごめくバル ンガが、まるでアドヴァルーンの如く浮遊している。地上で、独りの老人が赤い風船をバルンガに向かって解き放った。各地で勃発する大規模な停電。人知は、
この古今未ゾ有のパニックにどふ立ち向かうのか。我々は一心不乱に祈を捧げているのだ、或男の胃袋の中で…。やがて白血球と赤血球とが現れて…それから… 奇跡が…真っ黒くろ助が…SOS…の…打電音が…繰り返し…繰り返し…SOS…
8. 阿鼻叫喚ドッグファッション・ジスト魔
わんわん忠臣蔵」に続く駅前わん公シリーズ第二弾が今宵御紹介いたしまするところの「阿鼻叫喚ドッグファッ
ション・ジスト魔」なのでありまする。 新幹線の乗客が車窓から偶然にも目撃した驚愕すべきモホーク刈りにした首輪なき無頼の、わんちゃん。新幹線と並走して、やがて抜き去っていった。乾いた、
鎌鼬が乗客の頬に分厚いガラス越しに引っかき傷を付けて突き抜けて去っていった。去勢されちゃったあれに狸が魅入られ狐に見初められ間引くかれちゃったこ れは永久凍土に成り果て絶滅したはずのナウマンゾウを閉じ込めているらしいのだ。わん公の毛並に巣喰うジストマの群れ。奴らは寄生して生血をすすり、わん
公を骨と皮だけにして、更に骨と皮まで、しゃぶり尽くすまで寄生するのだ。ジスト魔、ジスト魔、その後自恋魔。ジレン魔、ジレン魔、その後ジスト魔。俺は 真夜中のテレヴィジョンを飽きもせず眺めているんだ。真夜中の砂嵐が吹き荒れてる彼女のテレヴィジョンを…。オ・レ・ハ・T・V・E・Y・E・・・
9. 大仏開眼
お釈迦様の掌を一生賭けて自分探しの巡礼の旅に出る自分。魂が、お遍路 さんに旅立つよ!と、駄駄をこねて困らせる。ノアの方舟がゴッドマウンテン頂上付近の山肌に、突き刺さったままの赤裸々な姿で。青天井から山蛭が首筋めが
けてポタポタ落下してチューチュー濁血をススル。万年不眠症だ、夜な夜な枕元に眩く輝くばかりの電気観音が降臨して来て、毛むくぢゃらのバクを解き放ち て、俺の逆夢を、貪り喰らいて寝具に悪夢のしゃれこうべを、とっ散らかせて直ぐ様速足で逃げてくんだ。全てを黒く塗れ、白く塗れ、検閲入れちゃえ、修正も
入れちゃえ、ハサミを入れろ、モザイクかけろ!! 雲を突くトーテムポールには隣人やら知人やら自分やらのデスマスクの群れが彫刻されていますよ、確認あれ。ネアンデルタールな人が、かがり火で暖を採り知
恵熱が出て感極まりて、ほとばしったスペルマがUFOと化した。嗚呼、えこえこ痣楽かな、ええこええこよのお。何者かが、めりめりずぶすぶと稲妻の閃光み たいに放電しながら神経の中枢まで届きそうに分け入って来た、来た、来た。俺の額に出来た大仏さま似の痣は既に片目が開いている。みつめ、三眼、見つめて
いたい。天から、するすると一本の蜘蛛の糸が垂れ落ちてきた。飛び付き必死によぢ登る、下界を見ると我先にと飛び付く人々が数億人も…更に亡者や浮遊霊を連れた輩にてその数は倍数以上に膨れ上がったのだった。当然の如く蜘蛛の糸は哀れにも切断され……
10. 台所太平記
夕暮れ時の通称岡ビル(岡山市内)にオレンヂ色の残光が乱反射し長い影を落としている。岡ビル入り口回転扉 を、くるりんくるりん回り続けてる赤い風船を持った御河童の迷子の少女。隠れん坊の最中に小石を蹴ったら時空が、ぱりんっと割れて渦巻きに拐われちゃった
らしきとの事。お嬢ちゃんの流した大粒の涙で池が出来て色々なアニマル達で、ごったがえしているのです。穴熊のキンタマよりもっと低い場所にある幻惑の ドッペルゲンガーを捕獲するのだ。俺はパブロフの犬の如く条件反射して超絶エレクトするのです。俺はリトマス試験紙の如く真っ赤っかに染まるのです。俺は
寝小便小町の様に敏感に反応して御漏らししちゃう。俺は、あんみつ姫の様に甘味処にて酔っぱらってくだ巻いて大虎と化しちゃうのです。お天気の良いうらら かな午後には悲しい程にエレクトしちまう哀しき性が爆発しちゃうんです。まな板の上で覚悟を決めて横たわる恋。俺の魂のキッチンへ、ようこそ…。俺のキッ
チンを、しずしずと進んで行くとやがて、隠れ里に到達して夜光性昼行灯駅前宇宙行きの特急ねこバスが待ち構えております。乗客の皆様、御乗車お早めに願い ます!次は第一章.三年寝太郎奇譚です。三年寝太郎奇譚でございます。尚、当ねこバス途中下車は出来ません。途中下車は出来ません、御了承くださいませ。では発車オーライ!